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アリゾナ解剖ツアー総括

 

こんにちは!

トレーナーの桂です。

 

アリゾナから帰国して2週間弱が経過しました。

国内のみならず、世界的にも貴重である冷凍献体での解剖実習。
可動域があまりないホルマリン献体ではなく冷凍の献体。
冷凍と言っても解剖時には解凍されており、保存処理がされていない生身の普通の人間の遺体です。

運動を指導する人、人体に携わっている人なら一度は必ず体験した方が良いと断言できる、鮮烈かつ衝撃的な経験になりました。

解剖学の文献で学んでいたイメージとは異なることが、本当に多くありました。

5日間かけて、8体の御献体を生身の状態から骸骨になるまで徐々に解剖を進めます。
医学部で約半年かけて行うようなプロセスを5日間で体験しました。

各グループ毎に、プロジェクトを立ててそれに沿って解剖を進めていきます。

我々のグループは、Movementに関しての共通言語を持つ方々で構成されているグループだったので、人体の構造と機能、動作に関しての様々な情報交換がとても刺激的でした。

可動域などを全身評価し、皮下脂肪や筋膜を摘出した後の可動域にどのような変化を及ぼすのかも検証しました。

実際にメスと鉗子を用いて、全身の皮膚を剥ぎ取り、皮下脂肪を剥ぎ取り、深筋膜・浅筋膜を確認してから切除、筋肉を目の当たりにし、靭帯や腱を確認後切除し、神経を摘出し、関節にまでたどり着きます。

ホルマリン献体の解剖とは異なり、生身の人間の筋肉の形状の確認や摘出はかなり難易度が高いです。

鮮やかな色をした皮下脂肪。
脂肪の量は当然ながら個体差が大きく、脂肪量が多い我々の献体は脂肪切除作業が大変難航しました。筋膜との癒着も想像以上に強固でした。

あまりにも強靭な筋膜の連結。想像以上に全身が強固な筋膜に覆われていて筋肉の境目が分からないほど。筋膜が第二の骨格と呼ばれる所以に納得です。一般的な解剖学書ではこの部分はあまりにも描かれていません。

例えば、広背筋の起始が肩甲骨下角を含む解剖学書と含まない解剖学書がありますが、実際の献体を腹臥位にして肩甲骨を上方回旋させながら下角の動きとその周囲を確認をするとその謎は解けます。

筋膜の癒着部位。いつもアプローチしている癒着部位を生で初めて確認しました。死後であることを差し引いても、あまりにも筋膜と筋肉の癒着は強固です。
メカニカルストレスによりリリースするか?
固有受容感覚にアプローチしてリリースを引き起こすか?
実際に癒着部位を目の当たりにすると色々考えさせられますね。

様々な筋肉の形状や動きを確認。
上半身の筋では、意外なことに最も体積が大きいのは三角筋であるというリサーチが多いようです。(Holzbaur et al. 2005)
リサーチの結果を直接確認。
確かに三角筋の体積は確かに大胸筋や広背筋のそれを凌駕しているように見えました。8体の献体がありましたが、どれも三角筋の体積は上肢で最も大きいように私には見えました。

股関節屈曲位で18の筋群の内、15の筋が内旋モーメントが増加する傾向があるとされています。(Delp et al. 1999)
直接確認し、内閉鎖筋や大腿方形筋には、我々はもっと目を向けなければならないと再認識。
特に内閉鎖筋は本当に特徴的でユニークであるにも関わらず、機能解剖学において梨状筋などに比べて注目度が低すぎないでしょうか?(PRIにおいてはHole Controlの役割があるとされていますね)

小腰筋は50%の人にしかないとされていますが、それも実際に視覚と触覚で確認すれば理由は明確になります。小腰筋がない人にも腱らしきものが確認できます。
つまり、機能解剖学を極めようとすることで行き着く学問は、発生学なのだろうなと思いました。

ローテーターカフはかなりの筋肉量です。個体差はもちろんあれど、特に我々の献体の場合は肩甲下筋が大胸筋よりも大きいのでは?と思えるくらいの筋量でした。インナーマッスルだと侮るなかれ。

神経や動脈や静脈。CNSを全摘出。感動的でした。とても太かった坐骨神経。動脈硬化のある部位の血管は弾力がなく固かったです。

腸や肺など内臓を全摘出。あの柔らかい触感は忘れられません。頭蓋骨を切断し脳や眼球も摘出しました。実物の気道にも私たちはとても驚かされました。

拝見することを切望していた横隔膜。
近年、劇的に注目されている呼吸のコンディショニング。実際に目にした横隔膜やZOAはイメージとは異なりました。
確かに大腰筋との連結は強固で横隔膜との境目が分かりませんし、別々に切り離すのは困難です。
やはり呼吸のコンディショニングの初期において大腰筋の制限を除いて取り組むことは重要でしょうね。

関節、靭帯、半月板、腱、などなど。
股関節の真空状態は想像以上です。股関節伸展時のPICRを確認。前捻、後捻の評価で知られるクレイグ検査も大転子に直接実施しました。信頼性が高くないとされていますが、膝の弛緩性などを含めても多くの判断材料の1つであろうという認識です。半月板のスライドや膝の人工関節、肩関節のバンカートリジョンらしきものも確認できました。

あまりにも芸術的に構成されている人体の構造に毎日が感動と驚嘆の連続でした。

極々一部を書き記しましたが、あまりにも多すぎて書ききれません。

人体と向き合う5日間。

Tomas Myersは語ってくれました。

我々は「死」に立ち会うという機会はあまりない。

人は誰しもいつかは死を迎える。
このような経験をすることで、死というものを理解し、
死に対しての準備ができてくる。

御献体は、教育のために体を提供してくれているわけだから、
そのチャンスを逃さないで欲しい。

私の(Tomas Myersの)母は98歳。
いつ亡くなるかは誰にも分からないわけで、そういう意味でも人体の解剖は感情的な経験にもなるだろう。

正気と狂気は紙一重である。
アメリカまで来て遺体を解剖するなんて、クレイジーだという人もいるかもしれない。
しかし、もしこの世の中が狂気であるならば、我々が取り組んでいる死に向き合う事は正気かもしれないのである。

多くの言葉が心に刺さりました。

我々は、体を学問に捧げて下さった方々の御陰で、人体の神秘と真実、そして人体に関して如何に無知であるかを知ることができました。
命を教材にさせて頂いた以上、我々には伝えていかなければならない責務があります。

ぜひ、記事をご覧頂いている方々へ来年の解剖ツアーへの参加をお勧めしたいと思います。
衝撃的な一生の財産になるでしょう。

写真は、解剖を指導してくれたTod Garciaと。

保存処理されているホルマリン献体の人間の部位を切り分けることは比較的容易ですが、保存処理がなされていない冷凍献体の筋肉や筋膜を切り分けることが、これほどまでに高度な技術を要するとは思ってもいませんでした。

高度な匠の技を見せて頂きました。

食事の席で何かメッセージを書いてくれないか?
とお願いしたところ、彼は「ちょっと考えさせてくれ」と言って5分間も(!)じっくりと考えた後に、静かにメッセージを書き記してくれました。

その誠実かつ物静かな人柄に、日々人間の「死」に向き合っている人の哲学を垣間見た気もしました。

人体の死と真摯に向き合う解剖実習。

献体。
学問への偉大かつ究極の貢献。

次世代の教育のために、
学問の発展のために、
自身の体を提供する。

その崇高な魂を、我々は最大限の敬意を払いながら、深く噛み締めて精進していかなくてはなりません。

教育に一生を捧げた私の祖父は、自身の遺志により山口大学医学部に献体をしました。

御献体に向き合い勉強させて頂きながら、目の前の御献体をふと祖父と重ねて見ている時も多々ありました。

祖父の孫であることに誇りを感じながら。

自らの無知を知ることで、
人は謙虚であり続けることができます。

「生きている」ということを改めて実感させられる実習。
「人体」に携わる責任感を再認識させられる実習。
トレーナーという仕事が、誇り高き「専門職」であることを再認識させられる実習。

本当に貴重な経験をさせて頂いた事に深く感謝しています。

合わせて、

 

 

全米屈指のハードとソフトを誇るアリゾナダイヤモンドバックスの視察。

世界屈指のパフォーマンスセンターEXOSと

 

Fischer Instituteの視察。

米国で大活躍されている菅野さんの熱いお言葉は5年前の訪問時も鮮明に覚えていますが、今回も本当に熱すぎるありがたいお話を伺うことができました。
5年前にいきなり訪問した若僧をしっかり覚えて下さっていて、本当に嬉しかったです。

 

かおりさん、トラヴィスさん、本当にありがとうございました。

そしてKinetikosという素晴らしいネットワークに感謝です。

アリゾナ最終日

こんにちは!トレーナーの桂です。

 

アリゾナ最終日の朝。

空港に向かうシャトルバスが午前10時に出発予定だったのでそれに間に合うように、午前5時半にホテルを出発し、
アリゾナに来たなら登っておけ!と現地のドライバーにイチオシされたCamelback Mountainへ。

目的は、頂上から日の出を拝むこと!

この時期のアリゾナは日の出が遅く、午前6時過ぎでも真っ暗。

 

足元が全く見えない暗闇をケータイの懐中電灯で照らし、絶壁のような所を何カ所か乗り越えて、頂上を目指します。

登るの超簡単だよ、と言われていたので完全に舐めてました。笑
想定していたよりは結構激しいです。笑

そして、頂上に着いた時には感動的な景色が。
そして、その30分後に御来光。


フェニックスの街並みが徐々に照らされていく景色は幻想的ですらありました。

神様が最後にアリゾナの大きなお土産をくださいました。

そして、10時のシャトルバスには余裕で間に合いました。笑

世界的にも貴重な冷凍献体を用いた5日間の解剖実習。
生徒数約8万人のアリゾナ州立大学の視察。
現地の色んなフィットネスクラブでのトレーニングと現地のスタッフとの交流。
メジャーリーグ屈指のハードとソフトを誇るアリゾナダイヤモンドバックスの視察。
5年ぶりに訪れることができた世界最高レベルのパフォーマンスセンターEXOSやFischerの視察。

本当に実りの多い、学びに溢れた素晴らしい修行の旅になりました。
かおりさん、トラビスさん、そしてKinetikosに感謝です。

詳細は、また改めさせて頂きますね。

現在、ロサンゼルスの空港でトランジット待ちです。

多くの学びと体験を持って、日本に帰ります。

 

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